裁判所は使用者が下記の賃金等の支払いをしなかった場合は、
使用
者に未払い金の他、未払い金と同一額の金額の支払いを命じることが
できます。
この金額のことを付加金と言います(労働基準法114条)
1 解雇の予告をしないで労働者の解雇をする場合に支払う30日分以上
の平均賃金
2 休業手当
3 時間外手当て(残業手当)
4 有給休暇期間中に支払うべき平均賃金
労働基準法114条は、労働者の請求があった場合に裁判所は使用者
(会社)に未払い賃金(残業代等)と同一の金額を支払うように命じること
ができると定められています。
付加金を請求できる時間的制限
そしてこの請求することが出来る期間は違反のあったとき(支払いをしな
かったときから)から2年以内と定められています。
付加金に対する遅延損害金
また、付加金の支払いが遅延した場合に対しては、判決確定の日の翌日
から年5%の遅延損害金を請求することができます。
(昭和50年7月17日最高裁判決 判決確定の日の翌日から民亊法定利
率である年5%の遅延損害金の請求を認容)
訴訟手続きにおける付加金についての運用
付加金は裁判所が支払うことを命じることができる性質上、裁判外で請求
することはできません。
そして訴訟手続き中でも、被請求者が賃金の支払(仮払い)をしてしまうと
付加金を命じる事はできないと解されます。
そしてその性質上付加金に対して仮執行宣言付を付することはできないと
解されます。
訴訟物の価額に含めるか否かについては、裁判所により運用が異なります。
東京地裁は「付加金は訴額に算入しない」大阪地裁は「付加金は訴額に算
入する」という運用方針をとっているようです。(平成26年時点)
裁判所での付加金を命じている場合
使用者側の(付加金の対象となってい
る各賃金等の)支払いをしない事情について悪質性があれば出ている傾向
があります。
支払督促手続きについては、裁判所書記官が行う手続きであり、訴訟手続
きではないので、
付加金の請求はできないと考えます。
訴訟物の価額とは、訴訟において原告が被告に請求する対象としての権利
関係等を訴訟物といい、その経済的利益を金額に表したものを
訴訟物の
価額(訴額)と言います。
裁判所に収める訴申立手数料の金額は訴訟物の価額によって違います。
(訴額が高いほど、手数料は高くなる)
そして訴額は簡易裁判所は140万円まで、少額訴訟は60万円までと制約
があるので、訴訟物に入れるのか入れないのかにより、訴訟の方法が
大き
く影響されます。
労働審判での運用
通常、付加金は労働基準法で裁判所が命じることができると定められてい
るだけで労働審判で命じることができる(若しくはできない)旨の規定はあり
ません。
東京地方裁判所では労働審判では付加金を命じることができないとされて
いるようです。
{根拠は、労働審判では労働審判委員会が審判を決定するので、裁判官で
はない(=裁判所でない)とされているようです。}
付加金は2年の期間制限があり、これは時効期間ではなく、除斥期間であ
り、中断と言う概念がありません(中断が出来ない)