消滅時効の起算点(開始時点)
残業代や給与、退職金の請求するにはいつまでも請求権の行使が保証
されているというわけではありません。
請求できるときからある程度の期間が経過すると、相手側が「消滅時
効を援用する」ことを主張した場合は、請求が出来なくなる場合があ
ります。
消滅時効について詳しくは、「残業代/給与の時効」をご覧ください。
その場合、消滅時効の起算点はいつになるのでしょうか?
つまり「じゃー具体的にはいつからの残業代であれば請求できるの?」
ということですが、残業代の消滅時効の期間は労働基準法115条に
より2年間と定められています。
具体的にはいつから2年間なのか?ということを説明していきましょ
う。
そもそも消滅時効は民法166条で「消滅時効は、権利を行使するこ
とができる時から進行する。」と定められています。
権利を行使するときというのはつまり、「請求することが出来るとき」
ということです。
具体的に見ていきましょう。
例えばAさんが3月15日に2時間の残業をしたとします。
Aさんの会社は、残業代の支払いは給与の支払いと同じで25日〆の
31日支払いです。
そうすると、Aさんは3月15日にした残業の手当てを3月31日に
支払ってもらえるのですが、もし、31日に支払いがされない場合は、
Aさんは3月31日から2年間会社に残業代を請求することができる
のです。
つまり、残業代を請求できるとき=残業代の支払日となります。
残業代の消滅時効の起算点=残業代の支払日となります。
但し、消滅時効の期間を算定する上での起算点としては、民法140
条の「期間の初日は算入しない」(初日不算入)とい規定により、
Aさんの場合、4月1日から消滅時効の期間の開始時点(起算点)と
なります。
よって消滅時効の期間は4月1日から2年後の3月31日となります。
ただし、Aさんの残業代の支払いが3月31日の午前0時から支給さ
れるとした場合は、起算点(開始時点)は4月1日でなく、3月31
日となります。(民法140条但し書き)
以下、具体的事例で説明します。
例えばAさんが2年前の3月15日に残業をしたとします。
Aさんの残業代の支払日が2年前の3月31日だったとします。
Aさんは(残業してから)2年後の3月28日に2年前の3月15日
の残業代の請求をすることは、消滅時効が完成していない段階での請
求であり、相手側(雇用者側)は「消滅時効の援用」ができません。
また、消滅時効が完成する前なので、(消滅時効の完成は3月31日
の24時)「請求」又は「催告」することにより「消滅時効の中断」
の行為をすることができます。
詳しくは「消滅時効の中断」をご覧ください。
(「催告」についてはその後6ヶ月以内に「裁判上の請求」等の行為
をしないと「時効の中断」となりません。)
そしてAさんが4月1日以降に残業代の請求した場合は相手側から
「消滅時効の援用」の主張をされる可能性があります。
以上の起算点の説明は「残業代」の他に「未払い給与」「未払い退
職金」にも適用されます。
未払い給与の場合
Aさんは、2012年2月26日から3月25日まで働いた給与を3
月31日に支払いされるはずでしたが、(〆日は25日)支払いがあ
りませんでした。
給与の消滅時効の期間は労働基準法115条で2年間と定められてい
ますから、2014年の3月31日までの間に請求すれば相手側から
「消滅時効の援用」を主張されることはありません。
また、消滅時効の中断は2014年の3月31日まで可能です。
未払い退職金の場合
Aさんは2009年3月31日に退職しました。
Aさんの会社の退職金に関する規定では「退職日に退職金を支給する」
とされています。
そうすると退職金の支給日が3月31日となります。
その日に支給されない場合、Aさんはその日から請求できますので、消
滅時効の起算点は退職日である3月31日となります。
ただし、残業代のところで説明したように消滅時効の期間算定の起算点
(開始時点)は退職金の支給が午前0時から支給される場合でないかぎ
り、初日不算入の原則に基づいて、4月1日が起算点(開始時点)とな
ります。
よって、(起算点である退職金支給日から)5年後(退職金の消滅時
効期間は5年間)の2014年の3月31日が消滅時効の期間満了(
消滅時効の完成日)となります。